旧ブログで、ロボットとコンピュータの違いに書いたことがある。
今度は、それを少し違った視点から描こうと思う。
ロボットにはたくさんのセンサーがつけられていて、自分の身体と合わせて、環境の情報をモニターしながら行動する。
ロボットは現実で「目覚めている」のだ。
一方、コンピュータは、もしシミュレーションだけをしているとしたら、
(物理シミュレーションでも、社会シミュレーションでもよいので想像して頂きたい)
コンピュータは外からの動的な情報を遮断して「夢を見ている」のである。
そこには、(通常は)唯一の外界であるユーザーが存在し、
インプットを投げかけてくる。
コンピュータ(ゲームマシン)はそのインプットに対して、
世界をシミュレーションしながら答えなければならない。
今度は、コンピュータはユーザーに対して夢を見せなければならない。
例えば、ユーザーにヴァナディールという土地にいて、モンスターと戦っていると思わせなければならない。
コンピュータはユーザーと一緒に夢を見る。
自ら作り出した世界の中へAIとしてユーザーの前に登場する。
それはちょうど、われわれが夢の中で、自らの記憶から作り出した世界で、
身体をもって活動しているのと似ている。
コンピュータは人工知能の夢を見る。
また同時に、メタAIとして、自ら作り上げた世界を自在に操ることも出来る。
雨を降らし、嵐をお越し、地を割り、無数のモンスターを解き放つ。
それはちょうど、われわれが夢の中の世界を自在に改変できるのと似ている。
そして、コントローラーの向こうでユーザーが眠りついたとしても、
電源が入っている限り、雑音のなくなった世界でコンピュータは夢を見続ける。
もし、コンピュータが抱え込んだ情報を解析するために、
シミュレーションを利用するとすれば、
それは、われわれが日常で抱え込んだ問題を、
眠った夢の中で解決するのと同じことだ。
そして、もっと高い立場から考えれば、
コンピューターと我々は、同じ夢を別の立場から共有しながら、
現実の何かを乗り越えようとしている。
ゲームとはそういうものかもしれない。