日本という国は、海外から文化や技術を取り入れるのが得意な国でした。だから明治維新後、もの凄いスピードで300年分の知識と技術を取り入れました。何しろ300年分を30年で吸収するなんて凄いと思いました。でも、残念ながら技術や知識を自分たちで積み上げることをあまり学びませんでした。
知識を自分たちで作り上げるのと、人が作った知識を取り入れるのでは、スピードが全然違います。1000対1 どころではありません。だから、知識を輸入することばかりに慣れてしまうと、だんだんと、自分たちでわざわざ知識を作り出すことが馬鹿らしく思えて来ます。そこで、知識を作り出す土壌を作り出せなかった文化は、根の弱い文化にしかならないのです。
今、ゲーム産業で大切なのも、そういうことです。我々はたくさんの知識を輸入しようとします。もちろん、それはとても大切なことです。しかし、我々自身が、自ら作り出す知識がなければ、そこにオリジナリティーも価値も生まれません。オリジナリティーの価値がなければ、それを受取る側の人には価値がないのです。輸入したものを輸出したのでは、日本という国のゲームの価値がだんだんと海外から見えなくなってしまいます。
勉強会もたくさんあります。技術の本もたくさんあります。それは素晴らしいことです。特に、この業界では、人より早く新しい情報を得ることに価値があります。 でも、人から得た情報は自分自身で生み出したものではありません。遠い場所から流れて来た情報に一喜一憂することは感度の高い人間として素晴らしい資質であるにせよ、クリエーターはその先に、たとえ得ることの1000倍の時間を使っても、自分自身でしか生み出せないものを生み出さないといけないのです。そして、それをコミュニティの中で共有して、積み上げて行くことで、強い存在感を持ったコンテンツを生み出して行くことができるのです。
得た情報を積み上げて行くことは本当に大切なことです。そして、その上で、最も大切なのは、我々自身が、我々自身の手で、我々自身が生み出したものを積み上げて行くことです。それこそが、日本のゲームの強い発信力となります。